「物忘れがひどくなった」「記憶力が下がった」など、歳を取ることを不安に感じられている方や受験勉強、期末試験、資格試験などで「1度記憶してもすぐに忘れてしまう…」何か良い記憶方法はないかと嘆いている受験生など、そんなお悩みをたくさんの方々から受けます。

確かに、歳を重ねると脳の神経細胞はだんだんと減っていきます。人間の脳細胞は、約1000億の神経細胞によって成り立っています。しかし、20歳を境に1日10万個ペースで減少していきます。つまり、20歳になる前の学生時代の学習方法をしていたのでは、効率的な記憶は困難なのです。もっとも脳細胞の減少割合は個人差があり、少ない人は1日3万個ペースで、多い人は1日20万個ペースで減少していきます。しかし、脳の働きを決めるのは神経細胞の数ではありません。個々の神経細胞とそれを栄養する神経膠細胞とのつながりである「神経回路」の数なのです。そして、この神経回路の数は、歳を重ね、その中で経験を重ねるごとに新たに増え続けることがわかっています。つまり、若い頃より、記憶力は低下していません、むしろ向上しているのです。

脳の中でも、記憶に大きく関わっている部位は、「海馬」であることが知られています。海馬は、側頭葉の奥、大脳辺縁系にあり、私達ヒトの場合、小指ほどの大きさとされています。海馬は「記憶の中枢」なのです。海馬以外にも記憶に携わる部分はいくつもありますが、頭を使えば「海馬」の神経細胞が活性化します。海馬の神経細胞は「シナプス」と呼ばれる部分で結合しており、シナプスによるネットワークによって物事を記憶します。そして、シナプスによる神経細胞同士の結びつきが強くなることによって記憶が強化、変化するのです。このように変化したパターンが、いつまでもその後も持続する性質を、脳の可塑性(かそせい)と呼んでいます。1973年に、ウサギの海馬の神経細胞に、繰り返して電気刺激を与えると、シナプスの信号伝達効率が向上して、その後は刺激を与えなくても、伝達効率が落ちなくなることが確認され、この現象をLTP(Long-term potentiation)長期増強といい、これが現在の記憶のメカニズムとされています。よって、勉強をすることによって中高年になってからでもシナプスを強化することが出来ますので、記憶力をアップすることは可能なのです。

人の記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があります。短期記憶は、神経伝達物質の一時的な放出であるため、すぐに忘れてしまう性質の記憶です。一方で、「長期記憶」は神経細胞の形が変形する為、長期間覚えておけるのです。つまり、記憶力をアップする為には神経細胞を変形させる「長期記憶」をすればよいということになります。長期記憶を促進する脳内伝達物質の1つに「βエンドルフィン」があります。このβエンドルフィンは、「脳内麻薬」とも言われる物質で「鎮痛効果」があります。その為、我慢強くなり、長時間学習していても大丈夫な忍耐力を生み出します。また、βエンドルフィンは嫌なことを快感にする『A10神経』を活性化するため学習効率もアップします。βエンドルフィンは、「楽しい」「好き」などと感じている時、リラクックスしている時、前向きなことをしている時、プラス思考をしている時など、ストレスフリー時に分泌されます。私たちの研究会では、このような神経回路の転写に必要なたんぱく質の生成や脳内伝達物質の豊潤さは豊富な血液量によって担保されるのは当然であると考えています。この考え方を形にしたものが『ストレスフリー療法』なのです。

「ストレスフリー療法」を実施すると、コルチゾールやACTHなどのストレスホルモンがほぼ100%有意に低下することは先にレポートで報告させていただきました。さらには、末梢の血流だけでなく、脳血流もおよそ2倍に増やすことを多くの実験、臨床例で確認しています。

今回は、ストレスフリー療法が学習能力や記憶にも、大きな効果が期待できることを示唆する実験データが得られましたのでご紹介します。
被験者は、了徳寺大学・了徳寺学園の健康成人の学生10名(平均年齢23.6歳、男性8名、女性2名)に協力を依頼し「ストレスフリー療法」実施前後における記憶テストを実施しました。これは、予め7桁の番号を無作為に10問準備し、それを3秒間凝視させた後決まった小運動をして、7桁の番号を思い出してもらいその正答率で短期記憶の比較テストを実施したものです。

1.SF刺激(1回のみ)が記憶力(短期記憶)向上効果に及ぼす影響
記憶最大容量 70  7桁の数字を10回記憶の平均値(MEAN)偏差値(SD)
統計学的有意差(t-test) 0.05以下が有意
SF刺激が記憶力向上効果に及ぼす影響

2.SF隔日刺激(2回)が記憶力(短期記憶)向上効果に及ぼす影響
記憶最大容量 70  7桁の数字を10回記憶の平均値(MEAN)偏差値(SD)
統計学的有意差(多重比較検定Tukey-Kramer) 0.05以下が有意
SF隔日刺激が記憶力向上効果に及ぼす影響

結果は、「ストレスフリー療法」による頭部への大幅血流の増加は高度に有意となる結果が示されたのでした。さらに、隔日で2回目の「ストレスフリー療法」実施後の短期記憶はさらに向上したのでした。
短期記憶の集積が、長期記憶に発展することは先にも述べました。この知見は、私達の学習能力・記憶の向上を意味し、受験生への朗報となることでしょう。

受験生は過酷なストレスと、睡眠を惜しんでの努力が要求されるのが常ですが、「ストレスフリー器」による「ストレスフリー療法」をわずか15分受けるだけで、ストレスをとり良質な睡眠が得られるだけでなく、腸管の蠕動運動を亢進させ、消化吸収と共に、排泄機能を高め、全身の血流を高めて、各種疾病を駆逐するだけでなく、記憶力を大いに高め、学習効果を高めることになるのです。
「ストレスフリー療法」による記憶力の向上のメカニズムについては、これからの更なる総合的研究と共に、この「ストレスフリー療法」の研究開発に添う、動物モデルの作製が急がれるところです。
いずれにしましても、脳細胞の活性化には、豊潤な血流量が必須であることは誰もが認める条件であるといえます。

※ ストレスフリー療法研究会 了徳寺健二会長著『長生きのスイッチを見つけた』より一部抜粋