うつ病も血流低下が原因(会長著作本より抜粋)

 過呼吸、不眠、食欲不振、手足の冷え、終日気持ちが沈んでいる、だるさも常にあり、何もする意欲がない。何も決められず、集中して考えることができない。生理不順もある。うつ病を診断され、休職を願い出た職員がいました。

 彼女は私達の整形外科に勤務する理学療法士で、将来を期待される大変優秀なスタッフでした。
すぐ、医療連携室のスタッフに連絡し、現状やその原因などの情報を入手すると、職場での人間関係に原因があることがわかりました。
その解決策を間断なく指示するとともに、彼女に電話を取り次いでもらいました。
 「○○さん、ごめんなさい。このような苦しく、辛い思いをさせてしまいました。原因はすべて私にあります。二度とそのようなことが起こらないよう、早速アクションはとらせていただきました。ついては、私からひとつお願いがあります。私が開発した『ストレスフリー療法』を受けてもらえないでしょうか?」
 私はそれが、心地よい熱刺激を足裏などに与えるだけのシンプルな治療であること、痛みや副作用などがないことを説明したうえで、「ストレスホルモン」コルチゾールの値が下がること、脳の血流が改善されることで脳内神経伝達物質の授受が円滑になり、うつが改善される見込みがあることを伝えたところ、彼女は半信半疑のまま了承してくれました。恐怖やストレスは、扁桃体を刺激し続け、これによってストレスホルモンであるコルチゾールが分泌し続けられます。うつ病患者は総じてコルチゾールの値が高いこと、コルチゾールの分泌が増えるとうつ病が重症化していくことは、最新の医学で明らかになってきたことです。
 
 私はうつ病の根底には、脳内血流低下があると考えてきました。
ストレスは、ストレスホルモンであるACTHやコルチゾールの値を高めるだけでなく、全身の血管を収縮させ、血流を低下させて低体温を作るのです。そのことは同時に脳内血流の持続的な低下に及び、大脳を始めとした脳内の諸器官がダメージを受け、それがパニック障害や、うつ病などの精神疾患に発展していくと考えていたのです。

「ストレスフリー療法」の結果は、見事なものでした。
最初の治療後には末梢の血流が3倍以上に増え、深部体温の上昇がみられました。
その日以降、寝つきがよくなり、治療後3日後からは本人の判断で睡眠薬を中止しました。
第2回の治療を終えた12日目には神経内科の主治医から著しい回復が認められ、職場復帰を薦められたそうです。
さらに15日目、3回目の治療後には、睡眠の改善が著しく、久しぶりに目覚まし時計が鳴るまで熟睡できたと聞きました。

 末梢の血流は、2・9倍、脳の血流も、2・1倍に増えていることが確認されたのでした。
採血の結果でも、「ストレスホルモン」であるコルチゾール値は9・8㎍/mlから7・6㎍/mlに、ACTHの値は16・3pg/mlから8・4pg/mlまで著しく低下していました。彼女はすっかり体調がよくなり、無事、職場復帰が果たされたのでした。ストレスフリー療法では、ストレスホルモンであるコルチゾールをほぼ100%の確率で有意に低下させますが、ストレスフリー療法では、うつ病は治ることがもはや当たり前となりつつあります。

 なぜうつ病になるかは、医学的にはまだ解明されていません。
うつ病の原因として、セロトニン仮説(セロトニンという脳内の神経伝達物質が、うつ病の発症に関与しているという説)が有力と言われていますが、セロトニンを補う薬だけでは治らないとも言われています。医学者によるうつ病の記述は、紀元前5世紀のヒポクラテスによるのが最古と言われています。そこでうつ状態は、メランコリー(melancholy)と呼ばれ、これは黒胆汁のことを表します。胆汁がうつ病の原因とされていたのです。東洋医学では、霊枢経脉篇の足の陽明胃経にその端を読むことができます。

是れ動ずる時は病む。洒々として振寒し、善く呻き、数々欠し、顔黒し。病至る時は人と火とを悪み、木声聞く時は惕然として驚き、心動ぜんと欲し、独り戸を閉じ牖を塞いで処る。甚だしきときは高きに上って歌い、衣を棄て走らんと欲す(……)

 こうした文献をひもとくと、現代の「ひきこもり」や躁鬱は、古代から存在していたことがわかります。東洋医学では、このような精神障害や衰弱を全身14ある経脈の内、特に胃経の変動によって起こるとしています。しかしながら、私は実際にはそのような単純なものではないと考えています。うつ病は、世界的に増加し続けています。ワイスマン教授を中心とする研究グループは、1970年代半ばから1980年代後半にかけて、北米、プエルトリコ、中東、アジア、環太平洋地域で、3万9千人の地域住民に対する疫学調査と、4千人を対象とする家族調査を行っています。その結果、すべての国で、うつ病にかかっている人が増えていることが判明したのです。

 わが国においては、うつ病患者数は昭和59年(1984年)に10万人くらいであったのが、平成10年(1998年)にはその4倍以上に急増しています。なお増え続け、現在その総数は、なんと100万人を超えていると言われています。

 うつ病、うつ症状の人は、ストレスを強く受けているケースが多いと考えられています。ストレスがかかると、体内では「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾールなどが分泌されます。

 これは生命維持に必要なホルモンであり、「ストレス」が必ずしも悪いものでないことは、ここからもわかります。ただ、このホルモンが過度に分泌されると、筋肉や血管は過緊張に陥るため、血流が阻害されます。血流が低下すれば当然、体温も下がり、体全体に「不調」を感じるようになります。

 私は、先述した甲状腺ホルモンの例からも、脳内の血流低下こそが、パニック障害やうつ病などの精神疾患を引き起こす要因だと考えています。そしてそれはうつ病に限ったものではなく、認知症も同じ問題に起因するのだと考えています。

= ストレスフリー療法研究会 了徳寺健二会長著『長生きのスイッチ』より抜粋 =