石井孝法 78

石井の勝手に連載シリーズ第1弾

トレーニング編 第12回

「体力・技術の相補性」

勝手に連載シリーズ第1弾ーートレーニング編は最終回.

最終回の内容ということで,
どのようにまとめるか悩んだ…

が,第8回の【追記】が非常に重要な部分なので,
この部分をもう少しだけ掘り下げて,
第1弾を終わりにしたいと思う.

今まで,
「体力トレーニング」
「筋力トレーニング」
「ウエイトトレーニング」
(コトバは様々であったが…)
についての誤解を解くことを目的として,
私の考えを述べてきた.

しかしながら,誤解を解こうと強調した部分やコトバの操作によって,新たな誤解を招く可能性がある.
なので,トレーニングというものを考えていく上で軸がブレないように,
その軸になる部分の話をする.

その軸になる部分とは,
第8回の追記の部分である.
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コーチは,競技特異性や選手個人の課題を理解し,
パフォーマンスの改善を導く専門的適応を生み出すように,
トレーニングプログラムをデザインしなければならない.
そのため,(単純な)理論だけでは,
すべてのトレーニングを説明できないこと,
必ずしも競技パフォーマンスが改善するとはいえないこと,
を頭に入れておく必要がある.
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上記は,体力・技術の相補性の観点が
必要であることを述べている.

相補性とは,
一方を確定すると他方が不確定になるような2つの量は,
互いに補い合いあうことにより対象の完全な記述が得られるもの
である.

体力・技術の相補性を理解しなければ,
私の考えを極端に捉えてしまうかもしれない.
例えば,
生理学的な効果だけに囚われてしまったり(一方向からの評価),
技術や体力の細分化した項目を一義的・断片的に捉えたりしてしまうかもしれない.

そうなると,結局は同じ過ちを犯すことになる.

以前,中間トレーニングという話をしたが,
それはパフォーマンスの改善のために
体力・技術の相補性の観点から考えたトレーニングになる.
体力要素へのアプローチが個別トレーニングであり,
技術要素へのアプローチが技術トレーニングであるが,
競技特異性や選手個人の課題を理解し,
パフォーマンスの改善を導く専門的適応を生み出すようなトレーニングが相補性を考慮したトレーニングである.

これらをどのようにバランスをとっていくかが重要であり,
パフォーマンスの改善を導く専門的適応を生み出すように
トレーニングプログラムをデザインすることはアートである.

優れた洞察力と高度な実践力を持つ創造的コーチや選手は,
直感的に運動における体力・技術の不可分な一体としての相補性に気付いており,その可能性を巧みに活用している(村木,2007).

トレーニングというものを考え行く上で,
これらが軸にあること,
そしてこれらの理解をさらに深められるように
学びと実践をやめてはならないことを記して,
第一弾トレーニング編を終わりにする.

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