「ミラコー!」
人は誰しも、思いもよらないところで、そういった瞬間に出合うものです。
そう、それは奇跡。Miracle。
お昼時のことでした。
武蔵野線の南流山で、乗って来たおじさんのファッションに目を奪われました。
だいたい60歳くらいのおじさんなんですが、格好は超ナウなヤング。
全体的に古着をうまく着こなしてて、アメカジな感じが、いい感じ〜。
緩めにキャップなんかかぶっちゃって、ちょっと斜めにしてるし。
パンツは、腰ばきして、裾を折り曲げて七分丈にしてるし。
リュックは、ラフにぼってり担いでるし。
おそらく渋谷の若者が、彼を見たら、こう言うでしょう。
「マジ、半端ねぇ」
ここまでだったら、なんのミラコーでもありません。ただのオシャレじじいです。
しかし、よーく他の部分を見てみると、おかしな点が・・・。
クツに何か文字が書いてあります。
「WIMBLEDON・・・」
「ウインブルドン!!」
出たんかっ!?あのテニスの四大大会の一つ、ウインブルドンに出たんかっ!?
服とキャップにも、かすれたマジックで何か書いてあります。
「吉一」
誰やっ!?誰やそれ!?おじさんの名前か?そんなもんに名前書いても誰も盗まんってーーーっ。
うん?待てよ。ってことはこの着こなし、狙ってやったわけじゃねーな。天然か・・・。
ミラコーーーーッ!フォウッ!!
よく見りゃ、ヒゲは無造作に生えっぱなしだし、着こなしがラフなのも、だらし無いだけなのか。
そして、平日の昼間に私服でいる。しかも「吉一」って書いてある。古着?拾った服?
浮浪者?いや違う。今日はたまたま休みかもしれんし、定年退職してたら、なんの問題もない。
もしかしたら、40年前テニス界で世界を震撼させた稲妻サーブの「吉一(仮名)」かもしれんし。
・・・わからん。
ということをひたすら考えてたら、
プシュー。
東松戸で降りていくではありませんか!
ちょっと待って、吉一のオッサン、あなたは一体、何者なのー?そして、東松戸には何があるのー?
吉一のオッサンッ!吉一のオッサーーーンッ!!
プシュー。ガタンゴトン。おじん、おばん。おとん、おかん。
っと、電車が私と吉一のオッサンを引き裂くのでありました。
もう一度会いたい。
ミラコー。それは、オシャレに興味がない人が、無作為な着こなしで、オシャレになってしまう奇跡。